契約書作成について|音楽著作権総合研究所

契約書の知識

契約書作成について

                    

契約書を作成する

 
 先に触れた契約の知識を踏まえれば、やはりそれぞれの合意内容は何らかの形で残しておくべきことに気付きます。それは双方の意思を目に見える形にすることで内容が整理されたり、誤解がなくなるという役割もありますが、将来的に契約内容について食い違いが発生した場合の証拠となる役割も果たすのです。
 このことから一般的には契約書を作成し、当事者それぞれが署名・押印することで、契約の成立を確認、証明するわけです。なお、「確認書」や「合意書」などといったものも、基本的には契約書と効力面で相違はありません。また、契約書に付随して「覚書」や「念書」「誓約書」などを作成することもよくあります。
                    

契約書作成のポイント

 
 契約書を作成する場合に注意すべきポイントも、先に触れた契約のポイントと重なります。ここで再度検討してみましょう。

  • 具体的な合意内容を明示する
  • 目的を達成するためにクリアすべき条件を検討する
  • 契約は当事者の双方を拘束する
  • 契約当事者は、つねに対等な力関係にない
  • 互いの信頼関係が契約内容を大きく変える
ⅰ.具体的な合意内容を明示する  これが契約書作成の最大の目的と言ってもよいでしょう。事実、多くの契約書には

第一条(目的)
甲は、乙に対し甲所有の不動産を賃貸し、乙はこれを以下の条件で賃借することに合意した。


といった目的を記載します。また、目的以外にも契約の趣旨や定義、契約の適用される範囲なども記載すべきです。

ⅱ.目的を達成するためにクリアすべき条件を検討する  口約束では難しい問題なのですが、当事者の一方が契約書を作成してみて「このような内容で契約したい」と明確に伝える事で、相手方も容易に契約内容を把握できます。そして、内容に不満があれば「何条の○○はこのように変更したい」と具体的に相談できるので、契約成立までの過程がスムーズに運ぶことになります。

ⅲ.契約は当事者の双方を拘束する  契約には損害賠償責任等、各種の法的責任が発生するので、契約書が「契約当事者は誰なのか」ということと「それは間違いなく本人なのか」ということをハッキリさせる材料にもなりますし、万が一約束が守られない場合に法的措置を取る際、契約書が確固たる証拠にもなるわけです。

Ⅳ.契約当事者は、つねに対等な力関係にない  実はこれが非常に悩ましい事なのですが、力関係の弱い方から「契約書を作成したい」「なにか書面に残したい」と要求しても、受け入れてもらえない場合もあります(プレゼン等の段階の場合など)、この場合にそういう相手とはビジネスをしないと割り切るのか、なんとしても要求を聞き入れてもらうように説得するかは、個々の事情によると思います。

Ⅴ.互いの信頼関係が契約内容を大きく変える  当事務所に相談に来られる際によく言われることですが、書籍やネット上にある「契約書のテンプレート」が使えないという原因の多くが、契約内容はそれぞれの契約当事者の関係によって変わるからです。高い信頼関係にある相手に「物々しい契約書のテンプレート」を送ると角が立ちますし、あまり信用できない相手に「最小限の項目が記載された契約書のテンプレート」を使うのは躊躇されるので、結局は自分達で内容を確定し、イチから契約書を作成するのがトラブルを予防する上で、重要なこととなります。

                    

さらに留意すべき点

 
 契約書を作成する際には、さらに留意すべき点があります。余裕がある方は是非、参照してください。

  • 一つも誤解をしないようにする
  • 契約書は取引の手引きにもなる
  • 法律に詳しくない場合
  • どのような契約書を用いるのか
ⅰ.一つも誤解をしないようにする  先のポイントで目的以外にも契約の趣旨や定義、契約の適用される範囲なども記載すべきと言いましたが、これは双方が契約についての内容を誤解しないために必要だからです。
 同じ賃貸借契約だとしても、その契約を行う趣旨や背景などによってそれぞれの条項の解釈が分かれる場合もありますし、特にソフトウェアや音楽著作権の場合、独特の専門用語もありますので、言葉の定義をはじめに確認(列挙)することも重要です。契約書作成の意味は「後で、言った、言わなかった」というトラブルを防ぐためですが、せっかく交わした契約書も「こう思った、思わなかった」という言い合いになっては元も子もありません。

ⅱ.契約書は取引の手引きにもなる  これは契約書の思わぬ副産物ですが、契約書を作成することで、相手方との取引のマニュアルも出来上がります。
 というのも、契約書には必ず取引の流れを踏まえた条項を盛り込むからで、契約書を作ることは「商品を製作する際の決め事は?」「完成しつつある商品のチェック方法は?」「商品をいつ受け取るのか?」「方法は?」「入金はどのように行うのか?」など、その後の相手方との取引を明確にする作業でもあります。
 また、余談ですが非常に複雑な取引の場合は「基本契約書」と「個別契約書」を複数作って、それぞれの時期によってルールを変えることが多いです。

ⅲ.法律に詳しくない場合  はじめに契約書は「当事者間の取り決めがある場合には、そちらが優先される」と書きましたが、これはあくまで原則で、民法やその他の法律で「強行規定」という必ず守らなければならないルールも存在し、そのルールに反する契約内容を記した場合、それは無効として扱われます。
 どの業種、どの商品、どの取引にそれらの「強行規定」が存在するのか、法律に詳しくない場合に安易に契約書を作成したり、テンプレートを用いるのは非常に危険です。必ず専門家に相談することをオススメいたします。
 なお、よくあるように契約書に必ずしも難しい法律用語や、専門的な言い回しを用いる必要はありませんので、その点は法律に詳しくなくても問題ありません。

Ⅳ.どのような契約書を用いるのか  よく質問されることですが、契約書であれば売買などの取引について、取引条件を明確にすることを主な目的として作成するということがおわかりに頂けたと思うのですが、「確認書」や「合意書」、さらに「覚書」「念書」「誓約書」など、どう使い分けたら分からないという疑問があるようです。
 もちろん、表題に比べて内容を見ると「これは、契約書だな」というものも存在しますが、一般的には「確認書」や「合意書」というの場合、取引とはいえないような事柄において双方の合意した内容を明らかにする目的で作成されます。
 例えば夫婦間で「もうお互い、浮気しない」なんていう内容を合意した場合、それは取引とは言えないので「合意書」という形を取るのですね。このような極端な例でなくとも、とある取引において契約書を交わした後に、契約当時に想定できなかった事態に対処するための処理方法を合意する際に作成することもあります。
 「覚書」は、事実認識や契約条項の解釈などを補足する場合や、契約当時より時間の経過によって変わった事など(社名や住所)を確認する際などに用いられます。
 続いて「念書」「誓約書」ですが、これはこれまでのものと違い、片方の者が相手方に約束する内容を証するものです。これまでの言い方をすれば合意ではなく、一方的な意思表示です。当然、署名押印は片方のみが行います。そういう意味では契約書に比べ、法的拘束力は弱く、証拠としての意味合いが強いといえます。
 最後に契約書の作成方法ですが、想像しやすいような「プリントアウトして、綴じて、契印をして、署名押印」というもの以外に、公正証書役場にて契約を交わし、署名押印する方法や、近年では電子契約というものも存在しますが、これらについては後述します。
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