契約書の知識

はじめに

                    

契約とは

 
 契約に関しての法律は、民法第3編 債権に規定されております。現行の債権の内容は任意規定というものが大半を占めており、簡単に言えば契約では、当事者間の取り決めがある場合には、そちらが優先されることがほとんどということです。

 では、そもそもその契約とは何なのでしょうか。契約では一般に双方の合意があれば成立する。(2つの意思の表示の合致によって成立する)ものと言われております。
 例えば、ある車を売りましょう(申込み)といい、その申込みに対して買いましょう(承諾)と返答があれば契約という約束が成立するわけです。これには法律的な拘束力が生まれます(約束は守らないとペナルティが発生する)。注意しなければならないのは、契約というものは、双方が例えば契約書に署名・押印等をしてはじめて成立するのではなく、口約束だけでも成立するということです。
                    

契約のポイント

 
 もう少し細かく契約のポイントについて、解説します。契約を考える際に気をつけるべきポイントは主に以下の5つがあります。

  • 契約とは当事者の合意であり、具体的な合意内容を明示する
  • 目的を達成するためにクリアすべき条件を検討する
  • 契約は当事者の双方を拘束する
  • 契約当事者は、つねに対等な力関係にない
  • 互いの信頼関係が契約内容を大きく変える
ⅰ.契約とは当事者の合意であり、具体的な合意内容を明示する  契約は当事者の「申し込み→ ←承諾」という意思の合致により成立します。このことから、契約時に何を合意するのかを明確にしなくてはなりません。この点が詰めきれていない場合に、後々のトラブルが発生するといえます。

ⅱ.目的を達成するためにクリアすべき条件を検討する  相談に乗っていて非常に多い問題ですが、目的を達成する、つまり例えば売買契約の場合「商品を売りたい」という目的を達成したい場合に、こちらは売った後の品質保証責任は負いたくない、けれども買い手は当然に保証を求めるといった条件の折り合いがつきにくいことがあります。一般的な商品でも、それなりに多くのクリアすべき条件がありますが、これが目に見えないソフトウェアの権利や、音楽著作権となれば、クリアすべき課題はたくさん生まれてきます。

ⅲ.契約は当事者の双方を拘束する  当然ですが、契約をすれば双方を拘束することになりますので、決め事をきちんと守らないと損害賠償責任等、各種の法的責任が発生します。またⅱのような条件を契約後に検討しようとしても、この拘束力が存在しますので、うまくいきません。必ず双方が納得するまで契約内容を詰めてから正式に契約することが重要です。

Ⅳ.契約当事者は、つねに対等な力関係にない  民法の原則としては、契約当事者は公平なのが前提ですが、実際は対等な関係にないことの方が多いです。買い手側が売り手側をデューデリジェンス(複数の中から競争して見積もりさせる)する場合や、売り手側の商品が他に売っていない物の場合、「この契約内容が飲めないなら、売らない」とする場合など、どちらかが立場的に有利なケースがあり、いくつかの不利な条件を飲むこともあります。

Ⅴ.互いの信頼関係が契約内容を大きく変える  上記、Ⅳにも似ていますが、小さな取引を継続的にしているのか、大きな取引を面識のない相手とするのか等、相手側との関係によって、必然的に契約時に持ち出す条件は大きく変化します。

                    次のページ>>